「抽象化」を考える
あまり語られない「抽象化」という概念
「抽象化」という概念は、 重要にも関わらずビジネスにおいて言及されることがとても少ないように思います。
曖昧かつ具体的ではない状態を指して「抽象的」と言われるなど、悪い意味でも使われますが、本質的に「抽象」という言葉は悪い意味ではありません。
ちなみに、抽象という言葉を辞書で調べると以下のように書かれています。
「事物または表象からある要素・側面・性質をぬきだして把握すること。」
私は「様々な物事から、構造を抽出できる能力」と捉えているのですが、同じことですね。
課題解決における抽象化する力
ビジネス的な側面で考えると、例えば、何かトラブルがあった時に、細かい情報や具体的な内容が好きな方はどうしても表層的な情報に注目してしまいます。
- Aの設定が異なっていた
- Bさんが不注意だった。
- Cさんの情報が正確ではなかった。
一方で、抽象化が得意な方であれば、それぞれの現象自体は本質的ではなく、本質的な課題は「作業量に対してマンパワー不足」と判断できるかもしれません。(この事例自体は適当なものですが。)
藤子不二雄作品のキャラクター構造
話は変わりますが、藤子不二雄の作品の抽象化して構造を抜き出すと、多くの作品が「同じような構造を持っている」ことに気付きます。
多くの作品において、「別世界からきた異能力者」を中心に、その周りに同じようなキャラクターが配置されています。
基本的な構造(キャラクター)に、様々なものを組み合わせることで、全く新しい物語を生み出しています。
成功事例の別業界での展開
もしかしたら、あなたも「藤子不二雄のキャラクター構造」を用いつつ、「空から落ちてきた神様」といった新しいキャラクターを配置することで、新しい物語を生み出せるかもしれません。(実際はとても難しいと思うのですが)
実はビジネスにおいても同様で、既存ビジネスの成功を抽象化することで、「藤子不二雄の作品の構造抽出」と同じように新しいビジネスを考えやすくなります。
例えば、Uberを事例とすると、アメリカでUberが成功した時に、「タクシーという従来型ビジネスモデルの変革」と捉えた人もいたと思います。(私も少なからずそうです。)
「アプリでタクシーを予約し、決済までできる。」
Uberが本格的に日本に参入する前から、タクシーの配車のアプリがいくつも立ち上がっていますし、今も競争しています。
実際、Uberが「Uber Eats」に参入したタイミングで、やっとUberの本質が「余っている労働力の活用(シェア)」だと気付くのです。
「タクシー」と「食事の宅配」。両者は全く違うように見えて、時間に余裕がある人を管理し、すぐに労働力(タクシーの運転・食事の配達)を提供できるという構造は同じです。
抽象化された構造を模倣してみる
Uberの構造を模倣して、新しい要素を組み合わせるとすると、例えば「地域で買い物を代行してくれる」サービスはあるかもしれません。
買い物にいけないご老人がいるとして、「ネットで依頼をしておくと、近くのスーパーで買い物している人がその人の分も買い物をして持ってきてくれる」というのはどうでしょうか。
実際にこのサービスが成功するかどうかは実際はどうでもよくて、重要なことは「物事の考え方として、抽象化された構造を利用する」ということです。
他業界で成功している「事業の構造」を抽出することができると、様々なバリエーションを考えることができます。(まるで藤子不二雄のように)
課題解決においても、新規事業においても、抽象化する能力は不可欠にも関わらず、なかなか言及されることが少ない能力でもあります。
「成功しているビジネスの構造は何なのか」それを考える訓練を続けるだけでも、力がつくと思います。
- 1(ここで語られる)「企画」はどのようなものなのか。
- 2企画に関する誤解
- 3改めて「企画」というもの
- 4企画に関する登場人物整理
- 5課題とはなんなのか
- 6「課題」発見の手順
- 7「課題」発見における、「目的」の重要性
- 8コンセプトの簡単な見つけ方
- 9企画を説明するプロセス
- 10企画における「目標」と、「ユーザー体験」
- 11「あったほうがいいかも。」という呪い
- 12「アイデア」の選びかた
- 13データが現す「過去」と、企画が考える「未来」
- 14「白」か「黒」、あるいはその「中間」という選択
- 15世界は単純なのか、複雑なのか。
- 16[概論] 論理的思考ってどうやるんですか?
- 17私たちは解決方法を見つけてしまう
- 18アイデアの価値
- 19神は細部に宿るのか。
-
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